またたびで猫を釣る
2005年 08月 30日
近所に野良猫はたくさんいるから、ときどき挨拶して紛らせている。
わたしは、見た瞬間に命名するのが得意だ(自己満足)。
たとえば、ふとっちょ(ふとってるから)。タビ(足の先だけ白いから)、桂ちゃん(頭だけすっぽりかつらをかぶったように黒いから)、スイカちゃん(顔の真ん中に、スイカの縞のような黒い縦線が走っているから。ちなみに三毛猫で、ふとっちょの妻)、エンピツ(しっぽがえんぴつのようにまっすぐで細い黒猫)、ヨリちゃん(目が真ん中に寄っている)、ぽんた1号(シャム猫の雑種。色味はシャムなのに、なぜかタヌキに見える。たぶんどこかの飼い猫)、ぽんた2号(1号の兄弟と思われる。こっちは色味はシャムなのに、目が細く短足。なぜかカワウソに似ている。)、モジャ(黒とオレンジ系の茶色のだんだらで。名付けようのない色とくせっけの毛並み。猫相の割に人懐こく性格がいい)。
名付けたのはいいけれど、よそではどんなふうに呼ばれているのかは知らない。きっと、みんな三つ四つ名前があるんだろう。
ほかにも、どうしても見分けがつかない黒猫姉妹とか、前にうちで飼っていたアメリカンショートヘアーのトムのオトシダネに違いないと思われる美人猫などもいる。
どの子も、通行人にはやたら臆病なくせに、夕方になるとやってくる「ねこのおばさん」にはめっぽう愛想がいい。車の陰から、しっぽをまっすぐたてて、ニャァ〜〜ンと、聞いた事もないような可愛い声を出しながらぞろぞろ集まってくる。
この人は、ほぼ毎日野良猫にエサをやりにくる有名人だ。
うちのトムが失踪した時も、面識のあるうちの子どもたちが、ねこのおばさんに情報を貰いに行った。
「○丁目の横丁のあたりにいるのをずいぶん前に見たけど。」
「えっ、そんな遠くに?」
ねこのおばさんのなわばりも相当広いのであった。
さて、わたしは猫がいなくて淋しいので、猫を呼ぼうと思った。
子どものころ、面白好きの父親がまたたびの粉を買ってきて、庭で焚いたことがある。
垣根の陰から、ひょい。隣の塀から、ぴょん。知ってる猫、知らない猫、まあ、いろんなのがやってきた。
猫っておかしい。ひょいっと出てきて目が合うと、「あ、いや、べつに」みたいな顔をする。
でも、またたびの妖しい薫りを吸い込んでしまうと、もう照れも警戒もあったもんじゃない。腰が抜けちゃって、ああもうだめ、あっちにごろごろ、こっちにすりすり。
いやー面白かった。
「ふふふふ」
スーパーのペット売り場で買ったまたたびの粉を紙に乗せ、火をつける。
ついでにまたたびの枝も燃やしてみる。
昼間っから、大人が火遊び・・・。
いや、いいでしょ、こういう火遊びなら。
5分・・・・
10分・・・
30分・・・
誰も来ない。
どうしたっていうの? ねえ。
ちょっと表に出て見る。二階に上がって、こっちにふらふら向かっている子がいないか、隣近所を見晴らして見る。
あんなに猫がいるはずなのに、一匹も来ないなんて!
最近の猫って、どうよ。
またたびの匂いも知らんのか!
がっかりして家に入り、別のことにかまけているうちに、すっかり忘れてしまった。
夕方、新聞を取りに出たら、自転車の下で、黒猫姉妹の一匹がごろごろしていた。いつもならすぐ逃げるのに、よだれでヨダヨダになって、目がとろーんとしちゃって。
さっき、ちょっと粉をこぼしたあたりだ。
またたびで釣れた猫、本日一匹。
デジカメの電池切れで写せず。
燃やさないほうが良かったのかしら。
昔は確か薬局で買った粉で、もっと量が多かったかも。
昔の方がホンモノのまたたびの粉だったのかな。
あきらめないわ、わたし。
乞うご期待。
*この写真は、桂ちゃんではありません。娘が江ノ島で撮った不機嫌な牛猫のおばさんです(いや、おじさんかな)。