びわの実の旅_その1

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七月七日、日帰りで長野県の黒姫童話館に行った。
この日は、作家坪田譲治の命日(ちなみにお生まれは三月三日)。そして坪田先生の詩碑の除幕式と祝賀会があり、お誘いをいただいていたのだ。

「善太と三平」を読んで育った私には、坪田譲治は子どものころから親しんだ作家だった。そして、たぶん父がそういうものが好きだったのだと思うが、「びわの実学校」の冊子もうちにあった記憶がある。年表を見ると、坪田先生が自宅に「びわの実文庫」を開いたのは私が生まれた年で、童話雑誌、びわの実学校、を隔月で創刊したのはその二年後である。
だが、それはもうずいぶんと昔のことなので、びわの実学校自体がもう消えてしまったのだと、勝手に思い込んでいた。
それが数年前、坪田譲治の遺志を継いで、新たな書き手に場所を与えるべく、びわの実学校の同人の方々が「びわの実ノート」として続けていらっしゃるのを知り、それからずっと定期購読している。発行日は、坪田先生の誕生日の3月3日、命日の7月7日、そして11月11日。

朝九時過ぎの新幹線に乗ると、長野まではあっという間だ。新幹線は便利だが、ちょっと速過ぎる。車内でゆっくり考えよう、と思っていたことが、黒姫周辺の地図を見ているうちに時間が経って、考えられもせず終わってしまった(笑)。
長野までがたったの二時間弱で、長野から信越本線で黒姫までが三十分かかるというのもどうも変な感じだ。
旅、というのはもっとゆっくりじゃなくちゃね、と思うが、日帰りしなければならないときは、さすがにありがたい。

黒姫駅から昼食付きのシャトルバスでどうぞというお話もあったが、松谷みよ子先生、あまんきみこ先生を始め、雲の上のような同人の方々や、関係者の皆さんの中に入ってのんきにお蕎麦を食べる度胸はとてもなかったので、最初から単独行動を目指した。
黒姫駅からタクシーで十分ほどで、童話館の入り口につく。入り口とはいっても、環境を考えて、建物の側まで車は入れないようになっているので、ここから送迎バスに乗るか、徒歩十分ほどを歩くかどちらかだという。
そりゃもちろん歩く方!というわけで、一人で草の道をてくてく歩いた。
だーれもいない、素敵な一本道。遠くに童話館の建物が見える。送迎バスがのどかに追い越して行く。
黄色い花がゆれていて、牧場があり、ところどころに白樺の丸太や枝で作った動物がお出迎えしている。
本当は、ここにあるリフトにも乗りたかったのだが、コスモスが咲く季節にならないと動かないらしい。そのリフトが、牧草地の上に点々とイスをぶらさげて続いている様子は、なんとも不思議な、絵になる光景だった。
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by rikakokoro | 2006-07-08 16:42 | ココロの栞 | Comments(0)

長井理佳。童話作家で作詞家。仕事歴は以下のプロフィールのページにあります。


by RIkaNagai
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