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ふるさと

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私のふるさとは、この街だ。
少し外へ出ていた時期もあったけど、ここで生まれて、今までの大半をここで過ごしているのだから。
でも、だからといってどこもかしこもというわけではない。
いつまでも心に住んでいる場所、心が住んでいる場所というのはほんの限られた場所だ。
この古い団地もそう。私が生まれる数年前に建てられた。当時はとてもモダンな造りの集合住宅だった。
だが、たぶんもうじき建て直しがはじまる。
50年近くの時間をかけてできあがった、木々のかたちやのどかな緑の広場、鬱蒼とした色とりどりの花壇や茂みは、もうすぐ根こそぎなくなってしまうだろう。
美しい場所は、時間をかけて、手をかけて、心をかけてようやく美しくなるのだという見本のような場所だ。
朝、子どもの学校に用があって向かう時、朝もやのクローバーの中にブランコがたたずむけしきは、たからもののようにきれいで、思わず立ち止まったものだ。
役人には情緒は二の次だから、この景観を少しでも残そうなんて、口では言っても本気ではあるまい。
というより彼らの頭の中では、木といったらどの木でも同じ、緑と言えば美しく整っていればよい、という程度の問題だろう。
そっくり取り換えるだけのこと、大した問題ではないに違いない。
かたちあるものはいつかは滅びるとは言っても、こうして今年もまた芽吹いき花開いた命が痛ましい。
子どものころ、この団地には多くの友達が住んでいた(今も住んでいる)。
その時代と、今の子どもたちがほとんど同じ環境で遊ぶことができる場所。そんな場所はもうなくなるのだ。

阿佐谷団地。せめてこれからなんども歩いて、写真を撮っておこう。
Commented by iroiroirony at 2006-04-08 15:46
昔自分が見ていたものが、いつの間にか建売住宅になっていたり、
小学校に行く途中の暗い森が、いつの間にかきれいさっぱりなくなっていたり。
わたしもそこを通る度に思い返します。
時間は流れているんだなぁ、としみじみ思いますよね。
Commented by rikakokoro at 2006-04-14 10:12 x
一度なくなってしまうと、お店でもなんでも、そこに何があったのかまったく思い出せなくなったりしますよね。
どんなに時間をかけて作ったものも、なくなってしまえばもうそこにはなくなるのだから、壊す前にはよーく考えないと。
そして、やっぱり良く覚えておかないといけませんね・・・。
by rikakokoro | 2006-04-05 22:28 | ココロの栞 | Comments(2)

長井理佳。童話作家で作詞家。仕事歴は以下のプロフィールのページにあります。


by RIkaNagai
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