1かい100えん

風邪引きで布団にもぐって、夢うつつに昔のことを思い出していた。
1回100円の歯医者さんがあったなあ。。。
あれは、中学生だったか、いや高校生になってたかな。
誰に教わったのか、「100円しか取らない歯医者がある」というので、虫歯の治療に行ったのだ。
たしか、西荻だったような記憶だが、はっきりしない。

診てくれたのは、もうおじいさんに近い男の先生だった。
イスも器具も、清潔だが、けっして新しいものではなかった。
だが、にこにこしてとても優しい先生だったので、私は別に不安ではなかった。
虫歯の治療が終わるごとに、先生は照れ臭いような申し訳ないような笑顔で、「100円です」と言った。
その手に100円渡して帰ってくる。
そんなことが診療の制度とかやり方として許されたのかどうか、そういうことは分からない。
とにかく、いつもおつりはないように、100円を先生の手に載せる。

ある日のこと、私は親知らずの治療に行った。
今思えば、親知らずどころか命知らずかも知れない。
先生は、歯を引っこ抜くのに、やっとこを持ってきた。
(もちろん麻酔もしてからのこと!)
そして、抜いた歯にドリルで穴を空け、「はい、ネックレスにどうぞ」と私にくれて、「100円です」と照れ臭そうに言った。
(あの歯、かなり長いこと取ってあったけど、どうしたかなあ。)
痛み止めは処方箋をもらって薬局に行くことになっていたが、痛まないので家に帰ったら、夜、麻酔が切れて死にそうに痛くなって、泣きながら薬局に走った。
その夜は眠れなかった。
それでも、こんなに痛むのは歯医者のせいだ!なんてぜんぜん思わない時代だった。
いや、そういう私だったというのもある。
なにしろ、100円につられて行くんだから。

しかし、、、やはり、今なら行かないだろう。
子どもが行くと言ったら止めるだろう。
いい先生だったよと聞かされても、斜めに聞いて、半信半疑だろう。
(何が変わったのだろう。
少し淋しい気がする。)

あの先生は、お金なんかより、歯医者という仕事が好きで仕方がなかったんだろうな。
一度はリタイアした人だったのかも知れない。
患者を診られるだけでシアワセだったのかも知れない。
あの頃で、もうけっこう年配だったから、今はもう・・・。

夢うつつに思い出して、それからしばらく眠った。
誰か知っている人はいないかな、そんな歯医者さんのこと。
[PR]
Commented by iroiroirony at 2005-10-08 02:01
100円、、、、安いです。
抜いた歯にドリルで穴を空けてネックレス、発想がすごいですね。
値段もサービスも良心的だったんですね。
Commented by Rika at 2005-10-09 13:14 x
のどかな時代だったんでしょうか・・・。
名前も場所も忘れてしまったのに、にこにこした感じだけ覚えてるんですよね。
チェシャ猫みたいだなあ・・・(笑)。
by rikakokoro | 2005-10-07 00:15 | ココロの栞 | Comments(2)

長井理佳。童話作家で作詞家。仕事歴は以下のプロフィールのページにあります。


by RIkaNagai
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30